事業成果を上げるためには、優秀な人材はいらない??

「人と組織」が経営の根源

経営にとっては、ビジネスモデルが大事だとか、成功する成長戦略を打ち立てることが大事だとか、ユーザー体験が大事だとか、商品力が大事だとか、経営資源の確保が大事だとか、人によってそれぞれの専門分野から、主張はあるだろう。そしてそれぞれの主張は、一理あると思っているし、共感する。成功事例なんかを聞いてみると、純粋に「すげぇ〜」と感動すら覚えるものもある。

ただ、これらを創り上げたのは、誰か?

突き詰めると、それは人であり、人の集合体である組織でしかないと、僕は思っている。

だからなのか、その根源である「人と組織」と言うテーマに僕は惹きつけられる。

 

優秀な人材は、本当に必要なのか?

そんな僕は、かつて人材採用コンサルティング会社で、新卒採用や中途採用の支援をしていた。「優秀な人材の採用」こそが経営の最重要事項であると確信していた。このように確信している人は、まだまだ少数派のように感じる一方、昨今、特にスタートアップ、ベンチャー界隈では、最重要課題となっているようで、ホットトピックであるように思う。スタートアップ界隈の成功事例などで、組織人事関連のテーマとなると、ほぼ「いかに優秀な人材を採用するか?」の話ばかりである。

でもね…

今の僕は、「優秀な人材の採用」は、それほど重要ではないと思っている。

 

Google社のプロジェクト・アリストテレスが我々に示すもの

Google社のプロジェクト・アリストテレスと言うプロジェクトをご存知だろうか?

Google社が2012年から実施した労働改革プロジェクトであり、Harvard Business Reviewで紹介されたことがきっかけで大きな話題となったプロジェクトだ。

僕の言葉で簡単に解説すると…

あのデータ分析のプロ集団であるGoogle社が、お得意のデータ分析力を駆使して、自社内で「成果を出しているチーム」と「成果を出していないチーム」の違いを分析して、定量的なデータに基づいた「成果を出すチームを作るための成功因子」を特定しようとしたと言うものである。

このプロジェクト、これまでチーム生産性の向上に重要だと、MBAやビジネス論で提唱されていた通説がことごとく打ち砕かれ、予想外に難航することになった。これまで、チーム生産性を上げるために、重要だと思い込まれていた因子の内、チーム生産性の向上に、あまり影響がない因子は、以下の通りだ。

  • Colocation of teammates… 物理的に同じ場所で働いているかどうか
  • Consensus-driven decision making… 合意による意思決定がされているかどうか
  • Extroversion of team members… チームメンバーが外向的・社交的かどうか
  • Individual performanceof team members… チームメンバー一人一人のパフォーマンス
  • Workload size… 仕事量、作業規模
  • Seniority… ベテラン社員、年長者の有無
  • Team size… チームの規模
  • Tenure… 終身雇用、終身在職権

 

チーム生産性が低い時、我々は…

「デスクを、物理的に同じ場所にした方がいいよね」

「うちのチームは、内向的な人が多いから、会話が少ないんだよね〜」

「優秀な人材を採用できないからな〜」

「年齢高い人たちが元気ない。彼らが足を引っ張っている」

…など、「あたかも正論」のように考察をして、妙に納得してはいないだろうか?

中でも、「チームメンバー一人一人のパフォーマンス」がチーム成果への影響があまりないという結果が、世の中に衝撃を与えた。このGoogle社のプロジェクトアリストテレスの結果は、我々が日頃信じて止まない「正論」を粉砕したのだ。

Google社自身も、この結果には驚愕した。何故なら、Google社の創設者であるラリー・ペイジなどをはじめとした経営陣は、創立以降、優秀な人材の採用を経営の最重要事項としていたからだ。

 

チーム生産性向上のために、重要な因子とは何か?

では、プロジェクトアリストテレスの結果、チームパフォーマンスに大きく影響する要素とはなんだったのか?

それは、「チーム内の心理的安全性が大事」だと言う、とてもシンプルな結論だった。

心理的安全性とは、心理学用語で、「チームのメンバー一人ひとりがそのチームに対して、気兼ねなく発言できる、本来の自分を安心してさらけ出せる、と感じられるような場の状態や雰囲気をいう言葉」です。

僕なりに、心理的安全性のレベルを表現してみると…

「どんな発言をしても、どんな苦言を呈しても、どんな提案をしても、どんなに弱音を吐いても、どんなに不都合な真実をカミングアウトしても、それを受け入れたり採用するかはどうかは別として、このチームなら必ず受け止めて、ちゃんと扱ってくれる。」と、チームを信頼している状態

…なのではないかと思っている。

では、我々が普段共にするチームは、果たして「心理的安全性」はあるのだろうか?

 

チームの「心理的安全性」を上げることのメリット

「そんなレベルは無理でしょ?」と考える人もいるかもしれない。ただ、仮に、これができたとしたら…

一人一人が、ありのままでいられる

チーム成果が上がる

…と、これ以上ない、最高の状態ではないだろうか?

 

仮に今後その事業でもっと利益を創出したいと考えていたとしよう。そのためには優秀な人材の採用が必要だと考えていて、ずっと採用に取り組んでいるのに上手く行かないと言う実態があったとしよう。

この「心理的安全性」さえ実現することができれば、優秀な人材の採用そのものがいらないのである。

この労働力不足の労働市場の中で、上手くいくか行かないか約束されていない、トップ数パーセントの優秀な人材の熾烈な獲得競争をするよりも、今のチームの「心理的安全性」を高めてはいかがだろうか?今の優秀な人材のヘッドハントや退職に怯えるよりも、チームの「心理的安全性」を高めてはいかがだろうか?

そちらの方が、よっぽど前向きで生産的な発想になれると、私は思っている。

 

この心理的安全性を高める技術が、世の中にはある。その一つが、私が組織開発のために主軸として活用しているシステムコーチングと言う技術だ。この技術を使えば、チームの心理的安全性を飛躍的に向上する。